「子どもたちの睡眠がいかに少ないか。その実態を知るとぞっとするわ」
そう語るWは、眠りの大切さを生徒やその親に教育するための、学校向け保健プログラムを作成中だ。
「子どもたちを睡眠障害にしているのは、私たちおとななのよ」とCは警告した。
S大学で睡眠を研究しているI・V・Cは、そのあたりをさらに掘りさげようとしている。
若い男性グループに、睡眠が1日わずか4時間という生活をしばらく続けさせた実験では、明らかにホルモン全体の機能不全が見られた。
ストレスホルモンであるコルチゾールが急上昇して、ブドウ糖処理能力が低下したのだ。
この状態が高じると、昨今とくに思春期の子に増えている、肥満や2型糖尿病を招きかねない。
「眠りが奪われると、各種システムがみんないかれてしまうのよ」とCは言う。
「眠りがなくても、ぎりぎりのところで活動はできる。
だがかならず何かが犠牲になっている」
ダフィラデルフィアに住む15歳の少年が眠りにつくのは、だいたい朝の4時だ。
賢い子なのに学校の成績が見るも無残なのは、いつも寝過ごしてスクールバスに乗りそこね、授業に間にあわないからだ。
何とか登校しても、授業中すぐ居眠りしてしまう。
そこで心配した両親が、フィラデルフィアで睡眠クリニックを営むJ・Mのところに息子を連れていった。
診察の結果、彼は睡眠相後退症候群と診断された。
これは思春期に多く見られる睡眠障害だ。
ティーンエイジャーの就寝時間が遅くなって、「フクロウ族」になるのは自然な変化なのだが、それが進みすぎて許容範囲を超えてしまい、しかももとに戻らなくなる病気である。
子どもは不眠症にならない。
寝るのが午前4時でも、ベッドに入ればすぐ眠りに落ちる。
その代わり、身体成熟にともなう脳の変化も手伝って、睡眠のサイクルがおかしくなるのだ。
これがおとなならば、夜勤の仕事についたりして適応することも可能だろう。
だがティーンエイジャーは、生活のスケジュールをまだ自分ひとりで決められないので、いろいろ面倒なことになる。
この病気は治療できるが、やりかたが変わっている。
患者はまず、就寝時間をさらに遅くするよう指示されるのだ。
本人は喜んで、それまで午前4時に寝ていたのを、午前6時にする。
こうやって少しずつ寝る時間を前に進め、時計の針を1回転させて正常な就寝時間にもっていくのである。
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